ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
「70億人の世界」を考える

70億人の世界


今、国連加盟国は192カ国。その国連が、各国や地域の最新の人口統計や推計をもとに世界人口推計(2010年版)を今年(2011年)の5月13日に発表しました。それによると、この10月31日に世界人口が「70億人」になったという予測です。

私が、ジョイセフに入った時は、40億人という大台に乗って3年目でした。1974年に世界人口が40億人に達し、初めての人口に関する政府間会議である「世界人口会議」もこの年に開催されました。

その頃は、人口と食糧、資源、エネルギー、環境などとのバランスで、「人口が多すぎる」のではないかと、研究者、政治家、マスメディアなどが訴えていました。それから37年が経過した今、その人口増への警鐘のトーンは相当下がっているように思えてならないのです。これは私だけの実感なのでしょうか。

人口が70億人という時代に入り、いままさに人口に関連する様々な課題への取り組みが検証されなければならない「新たな時代」を迎えているのではないでしょうか。

日本は人口減少社会へ


世界人口は、1987年の50億、1999年に60億人、12年後の今年にはさらに10億人が増加することになります。世界の人口増加は今後も続き、国連人口部は2025年には80億人に、2083年には100億人を超えると予測しています。

一方、ご存知の通り、国単位でみると日本は2005年から、すでに「人口減少社会」に入っています。いわゆる「超少子化超高齢化社会」といわれています。ここに人口問題の複雑さが分かります。国ごとのとらえ方が異なるということです。よって192カ国ごとに見解の相違があるのではないでしょうか。

多面的な世界人口


世界の人口に関する諸問題はあらゆる意味で、「有限の地球」をもとにして考える出発点のようなものでした。私たちがそのころよく使った言葉では、「宇宙船地球号」でした。それは、われわれ一人ひとりが地球という宇宙船の乗組員であるという考え方でした。まさしくマクロを見つめミクロから考え、行動するというものでした。

そのような背景で、いま私たちがどのようなアクションができるのか。70億人のアクションが国連人口基金(UNFPA)を中心に世界的に提唱されています。しかし、、超少子化超高齢化の日本では残念ながらあまり浸透していないようにも思えます。

一人ひとりのできること


今日は、少し「ミクロ」から離れた視点でお話していますが、ジョイセフは一人ひとりの視点に立った「ミクロ」からのアプローチをとってきています。地球を支える192カ国(乗組員であり、国連では発言権を持っています)が、人類の将来をしっかりと考え行動することが必要なのではないかと思います。まさに世界的なビジョンやそれを推進する政治力とリーダーシップを、改めて各国のリーダーに求めたいと思います。

日本のリーダーには、国際社会の主導的一員として、自国の問題や課題のみに拘泥するのではなく地球を単位としたリーダーシップを発揮していただきたいと思っています。

いま、70億人を迎えた人類にとって記念すべき年に、私たちは改めて、「宇宙船地球号」と乗組員である国のリーダーの責任、また一人ひとりの乗組員のできることを、考えてみるべきではないでしょうか。

(2011年11月、東京にて)
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# by joicfp_rio | 2011-11-24 11:34 | ニュース
ミレニアム開発目標(MDGs)の「体感」―カンボジアにて

カンボジアにきています


事務局長に就任して早々ですが、国際協力機構(JICA)の短期専門家としてカンボジアに出張しています。
「カンボジア国レファラル病院における医療機材管理強化プロジェクト」の「保健行政・マネジメント」分野の専門家としての技術移転が目的で、カンボジアの医療機材管理の政策文書や長期戦略づくりに参加しています。
私は、医療機材やその適切な管理は、よりよい医療サービスのための「底力」だと常々考えています。カンボジアには、2009年から年2回、短期ベースで派遣され、このプロジェクトを通じて、ほぼ2年間のおつきあいとなります。

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コンポンチャム州の保健所を訪ねて(後列中央が著者)

カンボジアの農村地域の母と子の保健事情


この間に、保健行政や保健事業の現状を把握するために、たびたび地方を訪ねて、地域の人々の保健事情、特に母子保健の状況を「体感」してきました。
カンボジアの80%を占めるといわれている農村地域の状況は改善しなければならないことが山積しています。とりわけ母子の現状は、他のアジア諸国と比較しても、よい状態であるとはいえません。
たとえば、最新の国連児童基金などのデータによると、カンボジアの妊産婦死亡率は、出生10万対290、乳児死亡率が出生千対68、5歳未満児死亡率は出生千対88と、依然として高い数値を示しています。この大半は農村部や貧困層で発生していることをみると、医療保健サービスへの「普遍的なアクセス」が重要な課題となっていることがわかります。

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後列が地域の助産師さん、彼女たちが妊産婦の命をあずかる最前線(プリヴィエン州)

さらなる分析


さらに、以下のような状況が浮かび上がってきます。
  • 妊産婦死亡、乳児死亡は80%以上が医療サービスの届かない農村地域で起きている。
  • レファラルの遅れが顕著で、ここでも妊産婦死亡の最大の原因である「3つの遅れ」(意思決定、搬送、治療)が主な原因である。
  • 貧富の格差、地域格差、男女格差が著しく、これらの「格差」が「命の重さ」を決定づけている。
  • 人的不足(医師、コメディカルなど、また資格・スキルなどに改善点が多いことや彼らの安定した収入は副業を持たなければ成り立たないのが現実)が保健医療サービスの提供やクオリティ不足ともなっている。
  • いわゆる「保健システム」や「保健マネジメント」が脆弱で、その理由には人的不足の上に、人材養成の不足、物的な不足(施設、機材、薬品)などが挙げられる。
  • 地域によっては、水や電気などのインフラが欠如している。


都市と農村の格差は大きい


特に、農村地域では、母子に関する保健医療サービスが著しく欠如しています。農村地域で妊産婦の緊急搬送が必要となった場合に、上記の理由や、複合的な原因で治療が遅れてしまうのです。また医療施設にも人的、物的、技術的な課題が多く緊急手術もできないようなレファラル病院も多く、現在も引き続き保健システムや病院システムの強化が、カンボジア政府を中心に、国連や国際機関、二国間支援機関、国際NGOによって行われています。しかしまだまだ十分ではありません。
カンボジアは、一方では昨今の「投資ブーム」もあり、プノンペンをはじめとした都市部やその近郊においては、見違えるような発展がみられますが、農村部は、いまだ「光の当たらない」ところであるといえます。

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入院病棟は常に満杯、でも、ここに運ばれた人々は幸運である?


妊産婦の命を救うことが終わりのないチャレンジであってはならないと思います


ミレニアム開発目標5(妊産婦の健康の改善)や目標4(乳幼児死亡率の削減)だけをとってみても、果たさなければならないことが、あまりにも多く、毎回派遣されるたびに体感しています。
2015年のミレニアム開発目標達成まであと4年を残すのみとなりました。2000年から国際社会が連携協力して実施してきていますが、まだ、多くの課題が山積しています。特に妊産婦の命を救うミッションは遠く険しいものを強く感じています。

私たちのチャレンジが「終わりのない」チャレンジであってはならないと強く思いながら、日々カンボジアのチームと議論し、汗を流しています。

(2011年10月、プノンペンにて)
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# by joicfp_rio | 2011-10-05 17:35
ジョイセフ新事務局長からごあいさつ
ジョイセフの事務局長の鈴木良一でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。

まずは、ジョイセフはお蔭さまにて9月1日に「財団法人家族計画国際協力財団」から
「公益財団法人ジョイセフ」に移行登記を完了し、法人名を変更しましたことをお知らせいたします。
これを機に、ジョイセフ役職員一同新たな気持ちで途上国の妊産婦と女性の健康と命を守るためにさらなる努力を傾けてまいりますので、なにとぞ今後とも倍旧のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。  

よい機会ですので、新しいジョイセフの新しい定款における「目的」と「事業」を、以下にご紹介しましょう。

【目的】
本財団は、人口・保健分野における国際協力の推進を通し、世界の人々が、生涯にわたる健康とその権利を享受できる社会を実現するために、家族計画、母子保健、HIV・エイズ予防を含むリプロダクティブ・ヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の情報とヘルスケア・サービスを自らの意思により自由に選択できる機会を確保できることを目指し、人々の保健の向上と福祉の増進に寄与することを目的とする。

【事業】
本財団は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。

(1) 人口・保健分野の技術協力・人材養成事業
(2) 人口・保健分野の社会貢献活動の普及、支援者拡大及び寄贈品支援事業
(3) 人口・保健分野の広報啓発・提言事業
(4) 人口・保健分野の調査研究事業
(5) 人口・保健分野の緊急復興支援事業
(6) 人口・保健分野の国連機関・国際機関、各国の政府・NGO等との連携・協力事業
(7) その他、本財団の目的を達成するために必要な事業

2 前項の事業については、本邦及び海外において行うものとする。


なお、9月1日付で以下のような新体制となりましたのでお知らせいたします。

公益財団法人ジョイセフ
会長   明石 康 
理事長  近 泰男 
専務理事   石井 澄江 
常務理事・事務局長  鈴木 良一 
業務執行理事   高橋 秀行 
監事2名、評議員18名、理事15名、
事務局(常勤27名、非常勤8名、ボランティア・インターン約10名)

また、鈴木良一が同日付で石井澄江事務局長の後任として事務局長に就任いたしました。微力ではありますが、全力をあげて、「新しい」ジョイセフを目指して、事務局一同、誠心誠意取り組む所存でございます。
なお、このコラムを通して、さまざまな視点から発信してまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。第1回目は少々硬い文章になってしまいましたが、次回からは硬軟取り混ぜて、全体としてジョイセフの活動や方向を綴っていきたいと思っております。
引き続きのご指導ご支援のほどお願い申し上げます。

(2011年9月 東京にて)

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鈴木良一(すずきりょういち)プロフィール

公益財団法人ジョイセフ 常務理事・事務局長
愛知県生まれ。早稲田大学第一文学部(社会学専攻)を卒業後、1977年にジョイセフ入団。
 研修係長、プログラムオフィサー、総務課長、シニアプログラムオフィサー、広報部長、総務部長、事務局長補、事務局次長などを務め、一貫して開発途上国での人口・保健・リプロダクティブ・ヘルス分野の国際協力業務に従事。2011年9月より現職。1998年人口問題協議会事務局長に就任〔兼務〕。
 この間20余カ国へ長期・短期専門家として派遣され、アジア、アフリカ、中南米地域の、草の根での家族計画・母子保健を含むリプロダクティブ・ヘルス(RH)および保健システム強化、コミュニティー・エンパワーメント・プロジェクトの実践家として活動。GO/NGO連携、思春期保健、保健システム強化、地域展開型RHプロジェクトなどの技術協力をチームリーダー、技術協力専門家として実施してきた。
 また、1994年の国際人口開発会議(ICPD)をはじめとした国際会議や人口・リプロダクティブ・ヘルス関連の政府・JICA調査団にNGO代表として多数参加。また多数の大学で非常勤講師を務める。日本人口学会会員、日本家族計画協会会員。著作に『家族計画便覧2000―少子高齢化社会とリプロへルス』(共著)、『異文化との接点で―草の根協力の最前線から』(共著)、『バングラデシュを知るための60章』(共著)、『やってみようプライマリヘルスケア‐変わりゆく世界と21世紀の地域健康づくり・第3版』(共著)などがある。


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# by joicfp_rio | 2011-09-01 15:32 | ニュース


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