ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
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持続可能な開発目標(SDGs)(2016~2030): 新たな地球規模的チャレンジへ
多くの報道が伝えているように、去るニューヨーク時間の9月25日の国連特別総会(国連サミット)においてSDGsが国連加盟193カ国の全会一致で採択されました。

ミレニアム開発目標(MDGs)の後継開発目標であり開発の新たな指針(アジェンダ)として、各国および国連・国際機関が過去3年の月日を費やし議論してきたSDGsがここに採択されました。まずは今までの各人の努力を賞賛し、採択までこぎつけたNGOも含めた多数の関係者に心からの敬意と謝意を表したいと思います。

さて、ご存知の通り、SDGsは2016年から2030年までの15年間に国際社会が達成すべき開発目標であり、国際社会の新たな指針となる重要な目標です。今後はそれぞれの目標をいかに実践し、計画通りに成果を上げるかに焦点が移ります。アクションが問われています。

SDGsの特徴としては、それ以前のMDGsの8目標から大幅に増え、ほぼ倍増の17目標となったことが挙げられます。

17の目標の中には、目標8のように経済成長や雇用に着目したものあれば、目標13のように気候変動への対策などと、新しく掲げられた開発目標が含まれています。

どの目標もひとつひとつが20世紀の終わりの10年に開催された国際会議それぞれ一回分の重さと内容を含んでいると言っても過言ではありません。17目標がそれぞれのターゲットを持ち、ターゲット数では合計で169となっています。

私の記憶では、8ゴール・21ターゲットのMDGsも、各国で実務者レベルにまで浸透するのに相当の時間が必要でした。それが今回はその2倍のゴール数、8倍のターゲット数となりました。理解するだけでもさらに時間や労力がかかるであろうことは十分想像可能です。もちろん、すべての人にすべての目標やターゲットが必要ではないと言えばそれまでですが、全体像の中の連携協力部分を知りたければ、まずは「森」を見なければならないとも思います。

また、数だけの問題ではなく、今回は、地球と人間に係る幅広く包括的な開発目標の設定となっています。これらを実際活動のレベルまで落として、関係機関や関係ステークホルダーに周知し、実施・モニタリングするとなると、実に気の遠くなるような時間と労力が必要となるのではないでしょうか。決めたのはよかったけれど、絵に描いた餅となってしまってはならないと思います。

とりわけジョイセフのミッションや活動項目と関連する、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRH/R)分野」は、2つのゴールのもとにターゲットとして入っています。それらは、目標3.の「保健ゴール」で、「家族計画も含むセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス・ケアサービスのユニバーサルアクセスの確保」、そして目標5.の「ジェンダーゴール」で、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスおよびリプロダクティブ・ライツ」として組み込まれました。ジョイセフはこれらの目標における女性の健康と権利の視点が揺らいではならないと引き続き訴えてまいります。

ジョイセフはSDGsの進捗を監視しながら、実践のみならず、アドボカシー活動や啓発活動を強化することが責務であると考えます。皆さまのご支援ご協力を改めてお願い申し上げます。  

(2015年10月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2015-10-23 09:54 | ニュース
毎年途上国の女性690万人が 安全でない中絶の結果、治療を受けている実態が明かに
―家族計画のさらなる普及を求める

グットマッハー研究所(本部・米国ニューヨーク市)の調査研究の結果、安全でない中絶により開発途上国で、年間推計690万人もの女性が、その合併症のために治療を受けている実態が明らかになりました。この調査は、2012年の1年間の研究成果によるもので、分析後2015年8月に発表されたものです。

安全でない中絶とは、「必要な技術を持たない人によって、または、最低限の医療・衛生基準にも満たない環境の中で、もしくはその両方の条件下で実施される人工妊娠中絶手術のこと」(新版IPPF・SRH用語集2010)を言います。

途上国26カ国の15歳から44歳の女性1000人当たり約7人が、調査時点で治療を受けていると推計されています。そして実際に安全でない状況の下で中絶を受けている女性は、適切な医療を受けることができない人々であることも裏付けされました。前回の調査でも約40%の女性が、必要とされるケアを受けられないままに放置されていることが判明しています。

中絶が非合法か中絶へのアクセスが非常に厳しい国々では、中絶そのものが秘密裏に行われるため、女性の健康や命が危険にさらされることになります。また中絶によって、健康面のみならず経済的に厳しい負担を強いられたり、結果、職業を失ったり、就業状況を悪化させたりと過度の負担が女性にかかっていきます。一方、開発途上諸国の保健システムが中絶後の保健医療ケアで、毎年推計で約2億3200万ドルの公費負担していることも判明しました。

これまでの調査研究では、2005年に安全でない施設での中絶による治療人口は約500万人、これは15歳から44歳の女性1000人当たり約6人でした。今回の調査では、民間セクターの数値なども加えた結果、さらに多くの治療者が報告されました。

中絶後の治療率では、ラテンアメリカでは2005年から2012年の間に約31%減少しました。また、女性1000人当たりでは7.7人から5.3人に減少しています。それは、この間に中絶後のケアへのアクセスが増えたのではなく、研究者は、中絶による合併症が減少したことによるのではないかと見ています。それらは、経口薬剤(ミソプロストロールなど)による中絶が増えたことによるのではないかと推測しています。

今回の調査の報告者は、より質の高い中絶後のケアが求められることと、併せて、望まない妊娠を予防するための家族計画(避妊)のより積極的な指導が重要であると提言しています。

中絶で命を落とす女性は世界に多数います。そして、依然として、中絶後の合併症で辛い日々を送っている数多くの女性もいます。1994年以来世界の国々はリプロダクティブヘルス・ライツを標榜し「女性の自己決定権」の保証を訴えてきました。しかし、その目標が未だ達成されていないのが現実なのです。

すべての女性が家族計画(避妊)の手段を確保し、望まない妊娠や予期しない妊娠を避けることができ、家族計画のアンメット・ニーズが満たされることが切望されます。それが、中絶の被害から女性の命や健康を守る最も重要な方法になるのではないでしょうか。

(2015年10月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2015-10-15 11:05
高齢化社会の普遍的な課題 :『世界アルツハイマー病報告2015』発表
世界的に高齢化問題が大きな課題となってきています。
その中でもアルツハイマーの課題は国境を越えた普遍性をもってその深刻さを増しています。最近発表された報告書をもとに考えてみたいと思います。

アルツハイマー病インターナショナル(ADI)によると、現在、世界では60歳以上のいわゆる高齢者(国連では60歳以上を指す)の人口が9億人を超えています。高齢者は2015年~2050年の間には、高所得国で56%、高中所得国で138%、低中所得国で185%増え、低所得国では239%増加すると推計されています。平均寿命が延伸することにより、認知症を含めた慢性疾患の発症率も高くなると考えられます。

認知症は世界的な兆候

2015年現在、世界で認知症と共に生きる人々は4680万人と推計されています。そして20年ごとにほぼ倍増していくことも予測されています。2030年には7470万人に、2050年には1億3150万人となります。新しい推計値は『世界アルツハイマー病報告2009』時点の12~13%増となります。

認知症と共に生きる人々の58%が世界銀行による低あるいは中所得国に暮らしています。そして、その割合は2030年には63%、2050年には68%になると推計されています。

毎年990万人増

報告書によると2015年に世界で認知症の新たなケースが990万人増加し、それは、3.2秒に1人の割合で増えていることになります。2010年時点よりも30%も高い増加率を示しています。2012年に世界保健機関(WHO)は、認知症を公衆衛生の優先課題であるとしました。

地域別に割ると、アジア地域で490万人(全体の49%)、アメリカ大陸で170万人(18%)、アフリカで80万人(8%)です。

直接的な医療費、社会ケアコスト、インフォーマルケアコストへの負担

報告書では、認知症の人を抱えると、上記のような負担があると指摘しています。
直接的な医療費、直接的な社会ケアコスト(専門家による家庭でのケア、自宅や施設でのケアを含む)、そして実際に支払われないが家庭でのケアコスト、などが挙げられます。これを試算して、認知症に関するグローバルコスト(世界全体で認知症にかけるコスト)は、2010年の6040億米ドルが2015年には8180億米ドルと、わずか5年で35.4%の増加となります。8180億米ドルは世界のGDPの1.09%と推計できます。

内訳として、直接的な医療費は、全体の約20%、社会ケアやインフォーマルケアで40%と試算される。インフォーマルで大きいのがアフリカ諸国であり、最も低いのが北アメリカ、西欧、南アメリカで逆転します。

グローバルアクションとして

これらの現状を踏まえて、ADIでは、G7による「認知症へのグローバルアクション」の呼びかけを提唱しています。認知症を共通の課題として、世界が共に取り組む時代に入っています。

日本は、その中でも、真剣に取り組んでいる国と位置付けられていますが、さらに世界と協調して進むべき時が来ているのではないでしょうか。日本は最も高い比率で高齢人口を抱えています。日本では国内の課題としての取り組みもさることながら、国際協力の観点からも、予防、治療、ケア、あるいは認知症と共に生きる社会づくりなどの分野での好事例の紹介が期待されています。

なお、報告書(World Alzheimer Report 2015: The Global Impact of Dementia- An Analysis of Prevalence, Incidence, Cost and Trends-)は、インターネットで詳しく見ることができます(www.alz.co.uk/worldreport2015)。
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by joicfp_rio | 2015-10-08 11:04


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