ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
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「世界父親白書2015」(State of the World’s Fathers)初めて発表
2015年6月「父の日」を前に、「世界父親白書」が初めて発表されました。耳新しい白書名であると思いますが、この白書は、世界的に男性や男子に対する公平で非暴力の介護者(caregiver)としての参加を促すキャンペーンを行っているMenCare(メンケア)という米国のNGO団体のアドボカシー出版物です。MenCareは、本部を米国ワシントンにおき2011年からキャンペーンを開始。現在約30カ国で女性に対する暴力の予防、妊産婦・新生児保健に関する活動や関連のアドボカシー活動を実施しています。

この白書は、父親と子どもの関係性が子どものすべての成長過程で影響を与えるものであり、介護者としての父親の参加が女性の命や人生にとっても重要な影響となると報告しています。

約80%の男性が生物学的に父親になります。しかし、父親による母親(女性)や子どもに与える影響やあり方について正確な研究が不足しているのではないかと訴えています。父親(男性)のあらゆる意味での参加は、女性のリプロダクティブヘルスの保障や子どもの成長、暴力の予防など幅広い分野で好影響を与えると呼びかけています。

最近の独自の調査研究に基づき、白書はいくつかの結果を報告しています。概要を紹介します。

  • 父親の参加が子どもの成長を促進する。父親の参加は子どもの社会性を開発することにもなる。

  • 父親の参加が将来の世代としての子ども、とくに女児の可能性を広げる。

  • 父親の参加は父親自身もより幸せに、また健康にする。

  • 介護者としての男性の巻き込みは、ある地域では増えているが、未だ女性の介護者としての参加と同等までには至っていない。

  • 実は父親は子どもとの時間をもっと持ちたいと思っている。

  • 男性の参加は、すべての子どもが望まれた子どもであるためにも必要である。2億2000万人の女性が安全で効果的な避妊方法を利用できていない。2012年に約8千500万人の予期しない妊娠があった。これは全妊娠の約40%に及ぶ。

  • 男性が出産前の健診、出産、産後のケアなどに参加することが、母親や子どもに良い影響を与える。予防接種についても父親の決断が必要とされる地域がいまだに多い。

  • 介護者としての父親の参加は、女性や子どもに対する暴力のサイクルも阻止し、予防できる。

  • 父親が育児休暇を取ることが子どもや女性に対して利益となり、よい影響を与える

  • 父親のさらなる参加や巻き込みは、結局、経済的な利益にもつながる


白書は、世界的にMotherhood(母親の役割)については、よく語られることであるが、Fatherhood(父親の役割)についても、さらに世界的に広く議論し、父親がさらに参加しやすいように、先進国のみならず開発途上国においても、各国の政策、行動計画、制度などを早急に整えることを提言しています。

この白書は、日本でも、父親に対する父親の役割の見直しや子育て参加などについて、さらなる呼びかけや支援制度の整備などを考えてみるべきではないかと考えよいきっかけとなるのではないでしょうか。

(MenCare のホームページを参照下さい。
http://men-care.org/what-we-do/advocacy/state-of-the-worlds-fathers/


(2015年6月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2015-06-29 17:06 | ニュース
戦後70年:平和を守る想像力を育む
戦後70年を経て、戦後生まれの人口が8割を超える時代になりました。

現在、戦争を体験した人々が極端に少なくなり、戦争の悲惨さや戦争による悲劇を語ることのできる人々が著しく減少しています。戦争を知らない世代が増えることにより、平和を守る「想像力」を失ってしまっている人々が増えているのではないでしょうか。

何かを批判するということは、そのことを熟知していて初めてできることです。批判する力を失った人々が過半数を超えた時、社会全体が過半数の論理に流されて判断を間違うこともあるのではないかと懸念されます。

「戦争のむごたらしさ」「戦争の悲しさ」「戦争のむなしさ」を知らない世代は、逆からみると、正しい判断力を持ち合わせていないことになります。ましてや身近な肉親を失った方々の世代も高齢化が進み、自己体験や身内の体験さえも伝承できていません。そして、そんな隙間に入ってくるのが無批判な同調現象なのです。適切な判断ができない人々は、いわゆる「ヘイトスピーチ」によって、翻弄される人々になる可能性が大きいのです。

いま、平和を守る、もっと積極的に平和を創るための想像力が極端に弱まっている日本人が増えていると思うのは私だけではないはずです。想像力が世界観をつくると言われます。悲しいかな、自分の想像力を超える扇動や誘導が行われたとすると、無批判に信じてしまうのが人間の心理のようです。この場合、その時々の政治によって煽動されることも起こり得るのです。

平和を考えるには、常に平和を深く考える理念や哲学を持つことが必要だと思います。それは、自らがどんな平和社会や国家を心に思い描くのか、そこにかかっています。何をすべきか、どのようにすべきか、私たちは常日頃から選択肢をもっています。しかし、理想の社会がどうあるべきかを考えるには、相当の想像力がいるものなのです。

では、想像力はどのように鍛えることができるでしょうか。それは、今自分のいる足元やその場を見るのではなく、まずは、今よりも一歩先を見通す力が必要なのです。虫の眼で見ることだけでなく、鳥の眼で見ることが必要なのではないでしょうか。

戦後70年を迎える今年、平和な社会や世界を想像する力が不足しているように思えてならないのです。日本社会が「右傾化」しているなどの話題もさることながら、極論すると、それがどういうことかさえも考える力を人々は失っているのではないかと思うからです。あまりにも、日本は長く平和であったことで、真の平和を想像することも、平和をとりもどすなどということも必要なく、なんらのアクションを取らなくてもそこにすでに常に平和があるかのごとくに思ってしまっているからなのではないでしょうか。平和は空気のごとくそこにあると思っているのではないでしょうか。

しかし、こんな時に人々の心の隙間に入ってくるのが、ある意図を持った政治の力なのです。政治は人心を操作し得る力を持っています。それがさらに多数決であれば、なおさら力を増します。政治は人々を間違った方向に導くことさえも容易なのです。なぜならば、国民一人ひとりが、想像力を失っているタイミングには、人為的な操作が入り易いのです。

戦後70年、私たちは、今一度、平和とは何か、最大限の想像力を駆使して考えてみなければなりません。人に惑わされるのではなく、ましてや、短絡的に「叩かれたら叩き返す」という考え方で維持する平和であってはなりません、平和を「創る」努力が必要なのですこの機会に深く考えることをあらためて訴えます。

私は、想像力こそが世界を守る力、平和を創る力であると強く信じています。

(2015年6月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2015-06-19 13:36
2014年の合計特殊出生率発表-1.42へ減少、子育て世代に優しい政策を
2015年6月5日に厚生労働省が、2014年の人口動態統計(概数)を発表しました。それによると、1人の女性が生涯に産む子ども数(合計特殊出生率)が1.42となり、9年振りに減少に転じたとのことです。2014年の実際の出生数は100万3532人で前年より2万6284人減少し、過去最少の出生数となりました。
 
合計特殊出生率は過去最低であった2005年に1.26を記録し、それ以降、微増ないしは横ばいが続いていました。厚生労働省によると、前年比で低下したのは、20歳台の出生率が下がったことが大きいとの分析です。
一方、出生率を都道府県別でみると、沖縄県の1.86がトップで、東京都の1.15が最低でした。実は、実際の出生数は4年連続の減少で、今年2015年にも100万人の大台を下回る可能性があるとも言われています。出生数の過去最高は第1次ベビーブーム期の1949年(昭和24年)の269万6638人でした。「ひのえうま」の迷信によって、出生数が激減したことで知られる1966年の136万974人にも、はるかに及ばない人数です。
 
また、平均初婚年齢は男性が31.1歳(前年30.9歳)、女性が29.4歳(同29.3歳)で、ともに過去最高年齢となり、ますます晩婚化が進んでいます。第1子出産時の母親の平均年齢が30.6歳で22年間続けて上昇しています。

少子化を考える時、短絡的に出生を増やす方途を探るのではなく、しっかりと女性やカップルの置かれている現状を分析してほしいと思います。増やすのか減らすのかという「人口政策」ではなく、どのようにしたら女性やカップルにとって優しい社会になるのかという視点からの「家族政策」の観点で議論してほしいと思います。

環境が整わない限り、安心して出産や子育てができません。子育て世代に優しい政策について、あらゆる観点からの議論が必要であると思います。

(2015年6月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2015-06-15 17:07 | ニュース


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