ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
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スタートアップ会議開催(ザンビア妊産婦新生児保健ワンストップ・サービス・プロジェクト)

スタートアップ会議開催:参加型ワークショップとして実施

本プロジェクトは、日本NGO連携無償資金協力の支援を受けて2014年12月3日に外務省・在ザンビア日本大使館とジョイセフの間で調印され開始されました。その一環で、ジョイセフとザンビア家族計画協会(PPAZ)は、ザンビア政府との協力で、2015年1月27日から28日にザンビア共和国ンドラ市において「ザンビア妊産婦新生児保健ワンストップ・サービス・プロジェクト」のスタートアップ会議を開催しました。今回の会議は参加型のワークショップとして運営し、プロジェクトの関係者の積極的な参加によって多岐にわたる成果を上げることができました。

施設の建設については、設計段階からユーサーフレンドリーな視点で、クライアントおよびヘルススタッフの動線を配慮した、参加型で実践的な設計デザインワークショップを行いました。

また、地域ボランティアの母子保健推進員(SMAG)の歌や踊りを使ったメッセージの伝達方法も披露されました。また、母子保健推進員制度が政府によって既に実施されているミャンマーの好事例の紹介もあり、世界的なコミュニティの潜在能力の発掘強化についても共有できました。

ワンストップ・サービスの拠点づくり

本プロジェクトは、ザンビア・コッパーベルト州マサイティ郡およびムポングウェ郡の妊産婦・女性に対する質の良い妊産婦・新生児保健サービス利用へのアクセスの増加により、妊産婦と新生児の健康が改善されることを目標にしています。また、本プロジェクトでは、保健センター(医療サービス提供施設)、出産待機のための「マタニティ・ハウス」、施設分娩施設、助産師の宿泊施設およびユース(若者)センターが併設されて「ワンストップ・サービス」(一カ所に拠点をおき、地域の健康づくりのための、包括的な妊産婦・新生児保健サービスや情報の提供を行う)が実施されることになっています。


コミュニティの主体性

会議でも、官民連携パートナーシップ(PPP・Public Private Partnership)にさらにコミュニティの主体性や参加が重要であることが話し合われ、PPPにコミュニティ(C)の連携を含めたCPPPが提唱されました。コミュニティがさらに主体性を持って、地域・住民参加によって母子保健推進事業が実施されることが、期待されるとともに、参加の医療従事者(医師、助産師など)、地域で展開するNGO(IPPFザンビア(PPAZ・ザンビア家族計画協会))や地域から参加の母子保健推進員(Safe Motherhood Action Group/SMAG)代表も含めた参加者全員の同意を得て開始されました。


3つの遅れの改善

妊産婦死亡率や新生児死亡率・乳児死亡率を下げることは、さまざまな角度からのアプローチが必要ですが、「3つの遅れ」(決断の遅れ、搬送・アクセスの遅れ、医療ケアの遅れ)を一つひとつ解決していくしかないのだと思いま。このプロジェクトがその重要な一歩となることが期待されます。ワンストップ・サービスがお母さんや赤ちゃんの命を救う拠点となることが望まれています。


プロジェクト対象地区

本プロジェクトの対象地区は、首都ルサカより約400km、車で5時間程度。第2の都市ンドラより約60~70km、車で1~2時間程度のところに位置する、コッパーベルト州マサイティ郡の5地区とムポングウェ郡の5地区2郡の事業対象人口(推計値)は以下の通りです。

プロジェクト地区 マサイティ郡 ムポングウェ郡
人口 140,452人 105,000人
0~24歳の人口 68,541人 51,240人
出産可能年齢の女性の人口 30,899人 23,100人

ザンビアの抱える課題と実情

ザンビアの実情は、依然として厳しい状況下にあります。少し以下に触れてみたいと思います。ザンビアは南部アフリカ開発共同体(SADC)、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)の主要メンバーであり、地域の政治経済的安定に貢献しているものの、経済発展に必要な道路や電力等の経済インフラ、および、医療・保健や教育等の社会インフラは未発達です。とりわけ地方の農村部の貧困率は高いままです。また、若者の失業率は地域によっては60%を超えています。国連ミレニアム開発目標などの保健目標達成への進捗も遅れています。

遠い病院

プロジェクト対象地区であるコッパーベルト州マサイティ郡とムポングウェ郡では母子保健及びリプロダクティブヘルス・サービスを含む保健サービスが不足しており、そのため多くの課題が山積みとなっています。最大の課題は妊娠・出産時の緊急搬送先としてのレファラル病院までの距離が遠いことです。マサイティ郡については、隣接するンドラ市にあるレファラル州立病院までの5つの都市からの平均距離は57キロもあります。またムポングウェ郡には、レファラル病院はあるものの、5つの都市からの平均距離は43キロであり、自宅で出産したり、合併症が起きても保健施設まで間に合わなかったり、緊急搬送できなかったケースが多く報告されています。

不足する保健人材

また、保健人材、とりわけ訓練を受けた助産師の数が足りず、マサイティ郡では人口約14万人に対して12人(17保健施設に配属)、ムポングウェ郡では人口約10万人に対して24人(16保健施設に5人配属、19人は2病院に配属)です。村の保健施設に着いても、医療従事者の不足、出産に必要な基礎的な医療機材や医薬品の不足、保健医療従事者の知識や技術の不足が課題として挙げられます。また、保健医療従事者の妊産婦への対応が親切でなかったり配慮が欠けていたりすることから、保健施設でのサービスの質が低いことなども報告されています。このような状況下、妊産婦が保健施設を利用する時は限られており、保健施設での出産割合は、本事業対象地区において平均31.5%と、ザンビア全体の保健施設での分娩割合48%(ザンビア保健統計調査2007年)より低い状態が続いています。また、十分なセクシュアル・リプロダクティブヘルス(SRH)サービスや適切な知識・情報が不足しているために、住民は時として地域の伝統的助産師や祈祷師に頼り健康リスクをさらに高めているのです。さらに、若者への働きかけが不十分で、保健施設での若者へのサービス受け入れ体制も不十分なこともあり、15歳から19歳までの十代の妊娠や望まない妊娠や出産も課題です。

3年計画

本プロジェクトは3年計画で実施されます。また、多くの日本の企業や団体からもご支援をいただくことが計画されています。今後も、プロジェクトの進捗に合わせて、逐次報告させていただきます。宜しくご支援ご協力ください。
(報告・鈴木良一)
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スタートアップ会議開会式にて(1月27日、ザンビア・ンドラ市)ムポングウェ郡保健局長、ジョイセフ事務局長、マサイティ郡保健局長、PPAZ事務局長(左より順に)

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参加型設計デザインを指導する遠藤幹子専門家(一級建築士)
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by joicfp_rio | 2015-02-10 16:29
国連防災世界会議に向けて
2011年3月11日の東日本大震災から4年目を迎える宮城県仙台市で、地球規模での防災のあり方を話し合う、第3回国連防災世界会議が来る2015年3月14日から18日にかけて開催されます。この会議を東北の地で開催する意義は大変大きいと考えます。ジョイセフでは、「女性の視点からの防災」をさらに訴えていきたいと思っています。

3・11で被災した方々の中に、多くの女性、そして妊産婦が含まれていて、彼女たちへの配慮が欠かせないことを私たちは被災者支援活動を実施する中で身をもって体験しました。女性のプライバシーや人権が無視された避難所、また女性や妊産婦の尊厳にかかわる支援物資の不足(生理用品や下着など)、被災したその日から、多くの問題が突き付けられました。

震災直後から、ジョイセフは、被災した方々、とりわけ妊産婦や女性に寄り添ってきたつもりではあります。しかし、いちNGOのできる範囲は限られています。多くの支援企業や支援者の皆さまの力をいただいて、緊急物資の支援から始まり、義援金の支給(ひとり5万円で2,403人に)、宮城県助産師会の助産師の皆さんと協力して妊産婦ケアやベビーマッサージ等被災したママたちの交流の場、みやぎ「助産師サロン」などの開催(24回)。

そして、被災したママたちの心のケアを目的としたリフレッシュ・ママクラスの開催(2年間にわたり東北3県18市町村で開催し、約500人が受講した)や女性のエンパワーメントを目指したジョイセフ・カレッジTOHOKU(東北の女性リーダー30人が参加した11回連続講座)など、また、インドネシア・アチェ州と東北の被災地の女性の交流などを通して、女性や妊産婦の皆さんの自尊感情を高め、元気づけ、さらにエンパワー(能力強化)することに努めてまいりました。

そして、いま、ステージは大きく変化しています。現在では、被災地の方々から、「被災地」とか「被災者」と呼ばれて差別的に扱われるのがいやなので、そう呼ばないでほしいなどの申し出をいただくことが多くなりました。大きな試練を乗り越えた女性として、大きく飛躍している方々が多いことに、皆さんと接するたびに、新たな感動すら覚えます。

今回の震災を通して、世界的な支援の広がりも記憶に鮮烈に焼き付いています。日頃、日本から援助を受けていた多くの開発途上国からの支援金が贈られてきたり、医療チームを派遣できるので、必要であれば言ってほしい等という、地球市民としての申し出も受けました。「お互いさま」という気持ちがひしひしと伝わってきたことを昨日のことのように覚えています。

ジョイセフでは、引き続き、被災地の皆さんの身近なニーズに合わせて、とくに「自立」や「エンパワーメント」に向けてのサポートを引き続き行っていく所存です。ご支援の企業団体、個人の皆さまのさらなるご支援ご協力をお願いいたします。

(2015年2月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2015-02-02 15:31


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