ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
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高齢化社会に挑むIPPF
高齢化社会に挑むIPPF:
第2回 高齢化社会におけるIPPF加盟協会(MA)の役割を考えるワークショップ開催、静岡県、藤枝市に学ぶ


ワークショップの背景と目的:
国際家族計画連盟(IPPF)は、高齢化社会における加盟協会(MA)の役割を確認し、その準備のために、まずは「高齢社会」のフロントランナーとしての日本の経験や教訓から学ぶことを開始した。2013年3月に第1回目のワークショップを東京で開催し、とりわけ東・東南アジア諸国の高齢化の現状把握と共通の課題を模索し基本的な方向性について議論を重ねた。

今回は、日本の経験や好事例の学習を踏まえて、具体的な今後の高齢化社会に臨む戦略構築を行うことを目指した第2回ワークショップを2013年12月9日から12日の4日間開催した。

参加国は、IPPF加盟協会(MA)の東・東南アジア・大洋州地域(ESEAOR)の5カ国・地域から中国(1名)、香港(2名)、インドネシア(2名)、日本(3名)、マレーシア(2名)、タイ(2名)の各国理事、事務局長・シニアオフィサー等が参加した。加えてIPPF本部から1名とIPPF地域事務局から代表2名が参加した。

第2回ワークショップは、国際家族計画連盟(IPPF)本部、IPPF・東・東南アジア・大洋州(ESEAOR)地域事務局、一般社団法人日本家族計画協会(JFPA)、公益財団法人ジョイセフ(JOICFP)(事務局担当)の共催で開催された。今回の視察先は、健康寿命日本一の県として厚生労働省から2012年に第1回健康寿命を延ばそう!アワード最優秀賞を受賞した静岡県、そして市町村では高齢化社会に取り組む先進事業を実施している藤枝市を訪問し、日本の地方自治体やNGOの取り組みについて学習した。

今回のワークショップの目的は、以下の通り。
  • 高齢化社会における生涯にわたる(ライフサイクルにおける)健康支援及びリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(RH/R)のニーズに基づくMAの将来的な役割の議論を深め共有すること。

  • 日本の高齢化社会における地方自治体、NGO(民間機関)などによる健康福祉支援事業などの好事例を学習すること。

  • 高齢化社会におけるMAの役割及びIPPF全体の将来的な戦略づくりへの提言をまとめて発信すること。


日本や静岡県、藤枝市から学ぶ:
初日は東京で、樋口恵子NPO法人高齢者社会をよくする女性の会理事長によるレクチャーを受け、日本における女性の健康福祉支援が依然として立ち遅れていることを共有した。あわせて各国のその後の進捗報告を実施し、それぞれの現状の活動の共有を行った。中国、香港、タイなどでは、すでに高齢化比率も増加しており、それぞれの実情に合わせた模索や先駆的高齢化対策活動が始まっている。

その後、12月10日と11日の2日間にわたって、静岡県及び藤枝市への視察訪問を実施した。

静岡県においては、以下の目的で訪問した。
  • 高齢社会先進国である日本の地方行政レベルの好事例及び教訓を学習する。

  • 日本の好事例で、各国に導入可能な項目を学ぶ。

  • 高齢化社会におけるNGO・NPOの役割について考察する(MAとしての役割を確認し、イノベーション(画期的な活動等)を検討し、戦略構築の準備を開始する)。


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樋口恵子先生のレクチャー、女性の支援こそが課題である

静岡県の先進的な取り組み:
静岡県は、現在、高い健康寿命を維持しており、男女ともに全国第一、女性は世界第一。また、医療費の削減の高い成果を上げている。健康寿命の延伸が、県の目標、市町村の目標となっている。あわせて、予防医学を推進し、健診事業を積極的にすすめることにより、健康長寿の実現を図っている。また、高齢者の社会・経済活動も推進している。

健康推進活動への参加を促し、楽しく歩くことや健康推進に参加することでマイレージカードが発行されて普及しているなどユニークな市民参加型の活動を学ぶことができた。

また、高齢者や市民が元気であることによりコミュニティー全体に活気が出るとの考え方は、ライフサイクルアプローチを考えるIPPFのMAにとっても有益なものとなった。このマイレージカード制度は現在全国でも注目されている行政・民間のパートナーシップ(PPP)として新たな社会システムを作っていることも確認できた。民間企業や地域商店もこの健康推進活動に参加し制度を支えている。地域あげての健康推進のための参加型システムとなっている。

斬新な取り組みとリーダーシップ・コミットメント:
12月10日、一行は川勝平太知事を表敬。知事からは、健康寿命日本一の“ふじのくに”静岡県への歓迎を受けた。一行は、知事の流ちょうな英語で迎えられた。知事は、高齢化が急速に進行している日本において、総人口に占める65歳以上人口の割合で、静岡県は2013年に24.9%と、4人に1人がすでに高齢者という社会となっており、このような「高齢社会」にあっても、また高齢社会であるからこそ、県民が住み慣れた地域で、いきいきと健康に暮らすことができる社会を実現することが、自分の務めであるとのビジョンを語った。また元気な高齢者を増やすため、県民の健康づくりに積極的に取り組んでいると、強いリーダーシップとコミットメントを示した。

静岡県の健康寿命は、女性が日本で第1位、男性が第2位。総合で日本一となったことを説明。それには、静岡県が全国一のお茶の産地であり、若者から長寿者までお茶をたくさん飲んでいること(実際は7杯以上がすすめられている)、地場の食材が豊富であること、また、県市町村の行政だけでなく、関係医療保健機関や団体、NPOや民間機関、県民・市民など、まさに静岡県挙げて健康づくりに取り組んできたことが、その要因である。また、それらの成果の裏付けが調査研究によって科学的にあきらかにされている(エビデンス・ベース)であることも学習できた。これが納得のいく自発的な連携協力事業となっている。結果や成果を明らかにし、さらにそれらを検証し、新たなイノベーションを生んでいることを知ることができた。役立つ情報や経験が豊富な視察となった。

静岡県は、2013年6月に富士山が世界文化遺産に登録され、名実ともに世界の宝である富士山を抱く県であり、今回の訪問をきっかけに、静岡県の素晴らしさを実感してほしいとの知事からのメッセージもいただいた。

知事表敬から始まった今回の視察訪問では、日本の高齢化社会における健康福祉支援事業・活動事例を学習し、各国の家族計画協会がより具体的な戦略構築を行い、IPPF全体の将来的な戦略づくりへの提言をまとめることを踏まえて、日本の地方自治体等の具体的な事業や活動を多く学ぶことができた。静岡県および藤枝市、また、静岡県予防医学協会、高齢者施設「池ちゃん家」などを訪問できた。

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川勝平太県知事表敬、高齢化社会に挑む強いリーダーシップとコミットメント

藤枝市での取り組み・市長のビジョン:
第1回健康寿命をのばそうアワード厚生労働大臣最優秀賞を受賞した静岡県では、社会の高齢化が急速に加速していく中で県民の健康寿命のさらなる延伸に取り組むための事業「ふじのくに健康長寿プロジェクト」、また同アワードの厚生労働省健康局長賞を受賞した藤枝市役所では、市民の健康を守るために市内地区ごとに30年前から設置している保健委員制度の仕組みやその役割や成果の説明を受けなど、ワークショップのメンバーは「健康長寿の施策は長年の政策努力の積み重ねや人々の絆や、地域の結束力が重要」であることの実感が持てた。

女性や高齢者の健康支援策を学びに参加したIPPFの各国協会のリーダーは、藤枝市の各関係機関の訪問や説明で実に多くのことを体得できた。自然環境、豊かな食材、お茶の効果、健診活動の奨励、マイレッジカードなどによる積極的な健康づくり活動への参加、県民や市民を挙げての取り組みなどから多くの示唆を得た。

北村正平藤枝市長は、市として取り組んでいる4K(教育、健康、環境、危機管理)のビジョンを提示し、市民の教育、健康の向上、環境面に配慮した生活の質の向上、震災や津波なども含めた多岐にわたる危機管理施策などが功を奏して、目下、県下35市町のなかで唯一人口増を経験しているとの報告があった。このことは、アジア地域からの参加者の高い関心を集めた。少子高齢化が進む社会において、市民にとって有益で価値ある施策に取り組むことが、魅力ある都市づくりを可能にしていることを藤枝市では証明している。藤枝市はそれぞれの国にも学ぶべき多くの好事例を提示してくれたのではないだろうか。保健委員制度などの地域参加型活動、高齢者のボランティア活動が社会参加を促すと同時に健康推進に効果をあげているなど特色ある活動にヒントを多く得たようである。

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県健康福祉部の説明を聞くIPPF参加者、具体的な応用可能な好事例を多く学ぶ

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北村正平藤枝市長を囲んで、4K(教育、健康、環境、危機管理)のビジョンに学ぶ

特色あるNGO/NPO活動
「池ちゃん家」では、地域に根差した高齢者に優しい施設やサービスのあり方を学ぶことができた。県の取り組むふじのくに型福祉サービス施設である「池ちゃん家」では、高齢者と障害のある人々との交流を通じた生きがいや役割づくりの取り組みを直接体感し感銘を受けていた。かつて縦割で行われていた、障害者サービス、高齢者サービスなどを横断的に統合し、包括的に実施することで、さらなる効果をあげていることが証明されている。共生型福祉施設、ワンストップ相談、居場所(交流の場)の設置など、地域に根差したサービスの特色をみることができた。

また、静岡県予防医学協会の総合健診センター・ヘルスポートを訪れた一行は、人間ドックや脳ドックの最先端の健診機器を使った近未来型の健康づくり社会の確かな方向性を予見することができた。

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池ちゃん家で地域に根差した健康福祉事業を見学

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予防医学協会ヘルスポートの健診活動を見学

人が中心:
今回の視察で学んだことの中でとりわけ、行政の指導者のリーダーシップやコミットメントの高さ、市民の健康推進のために真摯に働く前線で働く保健福祉担当者、保健師等の人材や地域におけるボランティア(保健委員)などの人的資源が、まさにソーシャルキャピタル(社会関連資本)として、あらゆるプログラムの成果を下支えできていることも体感した。人々の健康や福祉は、まさに人によって支えられていることを学んだ。

高齢化社会におけるMAの役割
IPPFの加盟協会(MA)は目下5A(Adolescent、Abortion、Access、Advocacy、AIDS)
を戦略的に実施してきている。彼らは、その5つのAに、新たにもう一つのA(Ageing・高齢化)を加えて、さらなる挑戦をしようとしている。

参加MAにとっても、生涯にわたる健康づくりを見据えた社会が求めるニーズに応えるために、多岐にわたるノウハウやアイデアを学ぶことのできた4日間のワークショップであったといえる。

ジョイセフとしても、IPPFの高齢化社会におけるMAの役割の確認・構築および中長期的な戦略づくりに向けて、日本の経験を踏まえて、できうる限りの支援協力をしていきたいと思っている。

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ワークショップ参加者集合写真
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by joicfp_rio | 2013-12-27 12:04
Continent of Future (未来の大陸)
最近、アフリカ大陸を「未来の大陸」とよぶ人々が増えています。

2013年6月に横浜で第5回アフリカ開発会議が開催されたことは記憶に新しいところです。アフリカ54カ国に対して、今後、その開発のために多方面の投資が必要であることが再確認されました。

アフリカ大陸が「未来の大陸」と呼ばれるようになった背景は、「未来」の中に、アフリカ地域の人々のみならず、人類全体の未来も含まれているからではないかとも思います。

先月、アフリカ連合(AU)・アフリカ経済委員会(ECA)の本部(エチオピア・アディスアベバ)に、この7月からIPPF(国際家族計画連盟)の代表として駐在している、サム・テラノさんがジョイセフを訪ねてくれました。かれは、2006年にナミビア家族計画協会の事務局長に当時30代の最年少で就任した優秀な人物です。

この日、彼が使ったキーワードも「Continent of Future(未来の大陸):アフリカ」でした。それを語る時の彼の眼が輝いていたのが大変印象的でした。新時代のリーダー、まさにここにありという思いを強くしました。夢を持つことによりアフリカ諸国がその実現に向けて動いているのだという印象もあせて持ちました。

私は、今まで持っていたアフリカのイメージを振り払わなければならないと思いました。急速な経済発展を経験している国々や、女性の社会進出などが顕著な国々もすでに多く現れています。

しかし、一方では、女性の地位は依然として低く、女性の生命や健康がないがしろにされている国々も未だに多数あります。とりわけサハラ以南の国々では、妊産婦死亡率も高く、女性の健康が脅かされています。いまこそ女性の地位が文化的・社会的にも低く、その改善が喫緊の課題となっています。

これらの国々の女性たちの地位や健康状態が改善されてこそ、「未来の大陸」アフリカの「真」の未来が来るのではないでしょうか。

そのためにも、アフリカの人々とともに私たちが今、しなければならないことは山積みです。アフリカの妊産婦や女性のために、それらの課題を着実に解決していきたいと強く考えさせられました。


(2013年12月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2013-12-17 15:56


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