ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
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45周年記念リプロダクティブ・ヘルス(RH)特別講座を終えて
ジョイセフ設立45周年記念の冠のもとで、6月から8月にかけてRH講座を5回連続で開催しました。今回の講座をジョイセフの広報グループが企画し、私、鈴木が演者を務めるとともに、参加の皆さんとのディスカッションなどを通して進めてきました。

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開催の趣意書では、
「1968年(昭和43年)設立の国際協力NGOジョイセフは2013年に45周年。これを記念して、リプロダクティブ・ヘルス(RH)分野の歴史的経緯を振り返りながら、私たちが、いま世界の妊産婦や女性のために何をしなければならないか、あるいは何ができるかを考える特別講座を開催します」と呼びかけました。

講座は全5回に分けられており、各テーマは以下の通りでした。
①「2人の女性の出会いが世界を変えた:1920・1・17・Sat.」(2013年6月18日開催)
②「日本の母子保健の経験:助産師・保健師と地域の女性が健康を支えた、その使命感とスピリットに学ぶ」(7月2日開催)
③「アフリカでは今:命をかけた妊娠・出産が行われている現実を検証する」(7月16日開催)
④「私たちのアクションが世界を変える」(7月30日開催)
⑤「私も国際協力の担い手になる:国際社会に貢献するための準備」(8月13日開催)


初回のマーガレット・サンガーと加藤シヅエの出会い、「魂の友(ソウル・メイト)」として、世界の家族計画をけん引してきた二人のパッションの話から始めて、日本の家族計画や母子保健の経験や教訓に学び、日本の草の根で助産師や保健師の果たした役割を振り返り、アフリカの妊産婦や女性の現状とニーズを考え、そして、私たちのアクションについて話合い、最後にはその担い手になるための一人ひとりの準備について議論を深めました。

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毎回、時間の足りなくなるような盛りだくさんな話題とディスカッションとなりました。各回平均10~15名の参加のみなさんは、年齢層も高校生から大学院教授まで、中には赤ちゃんを抱いて参加して下さった方もいて、実に幅広い参加者でした。毎回熱心に傾聴していただいていて感謝するとともに、話す側としても大変なやりがいと合わせて緊張感のあるものとなりました。またバラエティに富んだ参加の皆さんの間でもお互い学び合う場面が多く、双方向コミュニケーションと相互学習が可能となったのではないでしょうか。

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私たちが、人生のある時間を、この地球上のどこかで過ごすことは、まさに「偶然」ですが、日本に生まれた私達とアフリカやアジアなどに暮らす皆さんが一つの地球という社会で助けあうことは、私たちの気持ちの持ち方次第で「必然」となるものだと、私は確信しています。その意味から、今回のシリーズが、今私たちにできることは何かを考える大切な時間となったのではないでしょうか。もしそうであれば、企画したジョイセフやこの講座の事務局を務めたスタッフにとっても、望外の幸せです。

                    
 (2013年8月、東京にて)

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by joicfp_rio | 2013-08-19 11:13
女性性器切除(FGM/FGC)報告(ユニセフ)―1億2500万人が被害
国連児童基金(ユニセフ)から、世界の女性性器切除(Female Genital Mutilation/Cutting)に関する報告書が7月22日に発表されました。FGM/Cの被害者数は、徐々に減少してはいるが、依然として、社会の深部に根差しているこの悪しき慣習は残っており、少女たちにとって危険で、厳しい現実は変わらないと報告しています。

アフリカや中近東の29カ国の調査では、現在これら地域に暮らす約1億2500万人の女性がFGM/Cを受けており、今後さらに数10年に約3000万人の少女が同じ被害にあい、健康上、精神上の危険にさらされるであろうと推測されています。

調査の対象となった国の中で、特にFGM/Cの比率の高い国々は、以下の通りです。カッコ内は全女性に占めるFGM/Cを受けた女性の比率を示します。

高い順番から、
①ソマリア(98%)、②ギニア(96%)、③ジブチ(93%)、④エジプト(91%)、⑤エリトリアおよびマリ(89%)、⑦シエラレオネおよびスーダン(88%)です。

一方、報告書は、「女性たちはこの慣習が危険であることをよく認識しています。しかし、依然として、このことをしなければならないという社会的プレッシャーを強く受けており、他の選択肢はなく、そのことが、この施術を行う理由となっている」とさえ記述しています。法律を変えても、この悪しき慣習(Evil practice)を簡単に変えることはできないという悲観論もあります。しかし、一方では着実な減少も見られます。

ケニア、タンザニアなどでは約3分の1に、中央アフリカ共和国、リベリアなどでは約半分へと低減していますし、各国のさまざまな努力が不可能を可能にすると考えられます。

多くの国々で実施している、禁止のための法制化、住民への教育、反FGM/Cキャンペーンや行動変容のためのコミュニケーションなど、さまざまな試みの好事例を組み合わせることにより、さらなる低減を実現できると信じています。そのためにも、国際社会は、女性の人権や健康の視点から、引き続き声を上げていく必要があると思います。私たちは、常に、強い意志をもち、この悪しき慣習に立ち向かわなければならないと考えます。

(メモ)女性性器切除(FGM/FGC)とは(IPPFやWHOの定義を基に作成):
医療目的でなく、慣習的行為として、女性の外性器の一部または全部を切除する、また、女性性器その他に傷をつける行為をいう。
段階があるが、それらはクリトリスおよび/または包皮の一部または全部を切除(クリトリス切除術)。クリトリスと小陰唇の一部または全部を切除。大陰唇の切除を伴う場合とそうでない場合がある(切除術)。または、小陰唇及び大陰唇を切除し、経血の流れる程度の部分を残して、膣の入り口を縫合し、膣口を狭める(外性器縫合術)、などという施術を、医療技術のない地域の女性が、ガラス片やかみそり、縫い針などで、それも麻酔なしで、初経前後の少女たちに行うことをいう。
またこれは宗教的行事ではなく、アフリカや中近東地域で、約2000年にわたって実施されている慣習である。目的は、女性の性行動を抑え、結婚までの純潔を守るためといわれている。そしてこの慣習は、女性たちの手によって継承されている。

(2013年8月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2013-08-19 11:00
フィリピンの女性の歴史的な勝利―リプロダクティブ・ヘルス法成立
私は、1981年から1984年の3年間、国際協力機構(JICA、当時は事業団)の派遣専門家として、フィリピン共和国の家族計画・母子保健インテグレーションプロジェクト推進のために駐在し、フィリピンの人々と働く機会を得ました。

この時期の私は、3年間という初めての長期派遣で、すべてが学びの日々であったことを覚えています。

まずは、日本との違いを理解することから始めなければなりませんでした。
違いはいろいろありましたが、その中でも心に残る二つを挙げてみます。
それらは、

1.日本では昭和23年(1948年)の法律(当時、優生保護法、現在の母体保護法)により、安全な人工妊娠中絶が確保されていましたが、フィリピンでは、中絶は「憲法」で禁止されていたこと。

2.フィリピンでは、避妊を含めた家族計画活動はカソリックの影響で制限されていたこと。当時、避妊方法としては、自然家族計画法(Natural Family Planning Method: 子宮頸管粘液を観察することにより、月経周期において受胎能力の高い時期を予測する方法)のみがカソリック教会の認める方法でした。

そのため現実としては、望まない妊娠が予防できず、中絶が違法であるため、安全でない「闇の中絶」を受ける女性が跡を絶たず、多くの女性が命を落としたり、後遺症に苦しんだりしていました。実際の統計数値は、公式には把握されておらず、女性の悲しみや苦しさは「社会の陰」に隠されていました。

そんな中で家族計画プロジェクトの進め方には腐心しました。予防教育・広報教育活動から入る余地しかありませんでした。近代的避妊法を正式に提供・推進することができないままに実施する家族計画事業は難しいものでした。私が当時所属したフィリピン人口委員会(POPCOM)では、それでも、アメリカの支援を得て、プロジェクトとして避妊器具薬品の配付がアウトリーチワーカーによって行われていました。

2012年12月にフィリピンから朗報が届きました。

それは、「カトリック教会からの強い反対にあい、14年もの間、議会で立ち往生していたフィリピンの『リプロダクティブ・ヘルス(RH)法』、すなわち、『親としての責任とリプロダクティブ・ヘルスに関する法律2012年(Responsible Parenthood and Reproductive Health Act of 2012)』が、ようやく議会を通り、2012年12月21日、ベニグノ・アキノ3世(Benigno Aquino Ⅲ)大統領の署名によってようやく成立した。法案の成立を受けて、フィリピン政府は、公費負担による無料または低価格での避妊方法を全国の保健センターで提供することとなる。また同時に、政府は、公立学校で性教育を実施したり、コミュニティの保健オフィサー向けに家族計画についての研修・訓練を提供することも求められる」というものです(IPPF NEWS 2013年1月)。

今までは、カソリックの教えのもとでは難しかった避妊方法の選択肢が、政府によって法制化され公式に保障されたのです。フィリピン国内で、1960年代から家族計画・RH運動を行ってきた多くの関係者にとっては、まさに革命的な出来事となりました。

中絶は依然として、憲法での禁止事項ではありますが、望まない妊娠の予防のための避妊方法の選択肢の拡大、入手可能性の拡大、そして若者に対する性教育の推進、政府の保健担当者の実務研修などは、画期的なものと言えます。

フィリピンは、アジアで、女性や若者の社会進出が最も進んだ国の一つであり、これによって、彼らの更なるエンパワーメントが期待できるのではないでしょうか。私も、かつて、フィリピンの家族計画関係者の一人として、歴史的な法律の成立をともに喜びたいと思っています。

(2013年8月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2013-08-01 14:49


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