ジョイセフ事務局長 鈴木良一によるコラム
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歯止めのかからないODA削減―日本のリーダーシップへの期待
昨年から、東日本大震災や福島第一原発の事故による放射能汚染の影響などを受けて、日本社会全体が言葉に表せない不安感に覆われています。2012年に入ってもなお連日余震や新たな地震が続いており、2012年1月には首都圏で直下型大規模地震の予測も新たに発表され、国民生活に再び不安要素が加味されています。

経済面でも2008年のリーマンショック、また2010年にはギリシャの財政危機から始まった国債への信用不安、ユーロ安、株安、欧州経済全体への危機感などがいまだに漂っています。日本でも歴史始まって以来の円高などを経験し、震災の影響に加えて日本の経済への打撃を受けました。まさに国際社会が連動していることを物語る事象です。さらに経済大国第2位の座も中国に譲りました。日本の国際社会におけるリーダーシップへのかげりが着実に見えてきています。

日本のODAの1997年以来の削減


あわせて、日本のODA削減も2012年度も新たな削減となり、1997年以来、その削減に歯止めがかかっていません。ちなみに、人口分野での任意拠出金についても、かつて国際家族計画連盟(IPPF)や国連人口基金(UNFPA)への、最大拠出国であった日本が、今やそれぞれ、第3位、第8位の拠出国に落ち込んでいて、日本の両機関に対する拠出額はそれぞれ最大時の半分にまで落ち込んでいます。

かつて世界の人口問題やリプロダクティブヘルスの推進に重要な役割を果たしてきた日本は、資金的な支援において、他の先進国が外交的戦略上ODAを維持または増額しているにもかかわらず、日本の減額は国際社会の中での存在感を相対的に下げてしまっています。日本の世界の女性や妊産婦の健康や権利を守る先進国としての役割はまだまだ終わっていません。

国際社会の中で、日本が名誉ある地位を継続的に占めていくことを望みつつ、日本の英断を期待するものです。

(2012年3月、東京)
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by joicfp_rio | 2012-03-27 17:46 | ニュース
NGOについて考える

NGOは「志」を持ったパイオニアによって創立される場合が多い


NGOの多くは、「志」を持ったパイオニアによって創立された場合が多く、ジョイセフには、故國井長次郎氏や故加藤シヅエ氏が創設期にいて、ともに私たちの活動の精神的支柱となっています。また日本家族計画協会(1954年発足)や日本家族計画連盟(同、2002年解散)などの国内のパイオニア団体もジョイセフの発足前にすでに積極的な活動をしており、国内の活動が基礎となり、その経験を踏まえて、国際協力団体が創設されたと言えます。ジョイセフは、一人ひとりの自己決定権に基づく家族計画、女性の健康や権利の確保と推進、さらには、コミュニティでの住民参加による保健活動など、明快な理念を持ったパイオニアが土台をつくりました。

NGOという名称


さて、NGOについて考えてみましょう。NGOという呼称は、今までは、国際協力分野では広く浸透しています。実は、これは国連が、政府(GO)代表で構成されていてUnited Nations つまり、政府の連合体であることから、政府でない組織をNon‐Governmental Organization (NGO) と呼称し、1945年の国連憲章で「政府でない組織」、「非政府組織」の意味で作られたのです。これがNGOの始まりです。ちなみに政府でないということから考えれば、「国会議員」は立法府であり政府(行政府)でないので、NGOとなります。1968年に創立されたジョイセフでも当初は、国内においては特にNGOとは呼ばれていませんでした。実際には「民間団体」とか「民間組織」などと呼ばれていました。

GO/NGO連携協力の時代へ


ジョイセフは、日本の公益財団法人として国内のみならず、国連経済社会理事会の諮問NGOとして国連に承認されています。現在では、国際開発論議の中では、確実にGO/NGO連携協力はシステム化されてきているといっても過言ではありません。

現在では、NGOが政策提言活動を行い、政府の政策に影響を与え、実施面においては、政府の実施できないようなコミュニティや草の根での活動に実務的に連携協力するという形が形成されてきています。また保健分野では、開発途上国において行政の末端の要員との連携協力、たとえば、農村保健所の配置されている政府の末端の保健サービス提供要員である助産師などと連携してNGOが保健ボランティアを育成し、地元の保健サービスの支援体制を構築するなど、世界中で「GO/NGOの連携協力システム」がますます進化しています。

私自身のジョイセフでの35年の経験からも、そのことは実体験できています。私がジョイセフに入った1970年代では、私も個人として、NGOという言葉は使っていませんでした。やはり国際的な会議が頻繁に行われるようになった1980年代、1990年代にNGOが国連主催の会議で独自の集会を開くようになってからのことではないでしょうか。特に環境問題や人権問題では、NGOは住民の声を代表するという強い気概で集まっていました。

現在では、最初から、会議の中にNGOも政府とともに参加する時代となっているとともに、多くの政府がNGOを正式に「パートナー」として位置付けています。国連の会議でもすでにNGOが政府代表団に参加することを前提としています。

GO/NGOの連携協力がさらに進化することを望んでいます。

(2012年3月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2012-03-27 17:44 | ニュース
「国際女性の日」に願うこと-世界中の女性の健康とエンパワーメントのために

「国際女性の日」の意義


今から108年前の1904年3月8日に米国で女性の参政権を求めたデモが行われ、このことを記念して1910年に「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」日とするようにドイツで提唱されたことから「国際女性の日」が始まったと伝えられています。今から1世紀以上前、日本の明治時代に女性の参政権を求める運動が巻き上がり、それを記念するために女性の日が設けられたことは大変意義深いことと思います。

しかし、日本の女性が参政権を得るには、それから約40年後の1945年まで待たねばならなかったことは、皆さまもご存知の通りです。現在日本でも、この日に各種のイベントを行う機会も増えてきました。また世界では多くの国々がこの日を祝日としています。日本では、「子どもの日」や「敬老の日」は祝日ですが、女性の日は祝日ではありませんし、いまだこの日の存在さえも知らない人々が多いのではないでしょうか。ちなみに、この日が国連によって正式に「国際女性の日」と定められたのは1975年3月でした。

さて、よい機会ですので、今回は「国際女性の日」を取り上げて、皆さまとその意義について考えてみたいと思います。まずは開発途上国の女性のおかれた現状をみてみます。

開発途上国の女性の現状


途上国の女性をめぐる状況は、高い妊産婦死亡率、望まない妊娠を防ぐために必要な家族計画(避妊)に関する情報やサービスのニーズがいまだに満たされていないことや、HIVなどの性感染症の感染など、改善すべきことが山積しています。世界で妊娠や出産が原因で1日におよそ1000人の女性が命を落としています。年間にすると35万8000人です。また、これらの死亡の99%が開発途上国で起こっていますが、多くが助けられる命であったことはすでに検証されています。

すなわち、「3つの遅れ」が要因だとわかっています。妊産婦に何かが起こった時に医療施設に連れていくかどうかの意志決定の遅れ、そこまでたどり着けつけなかった搬送の遅れ、そして治療、医療ケアの遅れなどによるものです。望まない妊娠を予防する手段を講じることも自分で選択できなかったり、HIVに感染するのも多くが夫からであったり、ここでも女性が被害者となっています。

では、この状況を打開するためにはどうしたらよいのでしょうか。

女性の健康とエンパワーメントのために


わたしたちは、まずは、世界のすべての女性の命が守られ、健康であることを切望します。とりわけ、妊娠や出産が原因で死に至るようなことがあってはならないと強く思います。ジョイセフは、もてる力を世界の女性の命と健康を守るために注いでいきたいと思っています。すべての妊娠が望まれたものであり、すべての出産が安全であり、すべての子どもが健康に育てられる環境をつくることを目指します。また、エイズを含めた性感染症から女性が自らを守るための知識や情報、手段を提供したいと思います。そのために妊産婦や女性の健康や命を守る地域の助産師、医療従事者や保健ボランティア、あるいは母子保健推進員などの育成を図っていきたいと思います。

さらに女性のエンパワーメント(力をつける)も推進します。健康や生活に関する知識や情報を継続的に提供されることにより女性がエンパワーすることは分かっています。また、収入作りなどを通して女性の経済活動への参加も促しています。開発途上国の多くの女性は男性優位社会で暮らしていますが、これらの健康向上、教育向上、経済活動の推進等を通して、女性の地位が向上していくことを強く望んでいます。

「お互いさま」を合言葉に


ジョイセフは、2011年3月11日の東日本大震災の被災地支援を震災直後から実施してきました。世界中から温かいご協力をいただき、被災地の妊産婦や女性及び新生児への支援を、緊急支援物資の提供、義援金(ケショ)による産婦への支援、助産師による妊産婦ケアの提供、産婦人科医による家族計画サービスの提供、保健施設の機材供与、妊産婦や女性のための憩いの場所の設営と運営などを通じて届けてまいりました。

日頃私たちが支援している開発途上国からも被災地への支援が多く届きました。苦しい時は「お互いさま」という思いが世界中にあることも私たちは痛感いたしました。ジョイセフは、被災地への引き続きの支援を行うと同時に、開発途上国への引き続きの協力も、「お互いさま」を合言葉に、さらに推進していきたいと思っています。

「国際女性の日」にジョイセフの思いをお伝えするとともに、みなさまの引き続き温かいご支援ご協力を、世界中の女性の健康とエンパワーメントのために差し伸べていただきますよう心よりお願い申し上げます。

(2012年3月、東京にて)
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by joicfp_rio | 2012-03-07 11:38 | ニュース


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